期待のホープがまさかの転落

昇進

新入社員のうちは同期の間でも差はありませんが、2年3年と経つうちに仕事の出来や上司によって待遇に若干の差が出ます。そして、その差が顕著に出てくるのが5年から10年程度経ってからのことになります。

少しずつ自分の「立ち位置」がわかってくると、安定を望む人や上を目指す人で同期の間でも違いが出ます。給料面でも違いが出てきますし、任されている仕事の内容にも差が出ます。次第に「自分が管理職になったら…」ということを意識し始める人も出てくるでしょう。

どんな会社に勤めている人であっても、管理職とヒラ社員の境界線は意識するはずです。そして、管理職と呼ばれる地位を超えると自分の将来が大きく開けたような気になるものです。しかし、開かれた将来とともに足元も注意しないと、思わぬところで躓くことになりかねません。

同期トップの優越感

同期トップで管理職になるとやはり優越感に浸ることになるでしょう。会社によって言い方は分かれますが、会社によっては「第一選抜」という言葉を使うようです。正にこの言葉が、同期トップの心の中を表しているでしょう。

トップで管理職になる人は、毎日の仕事も大変です。残業続きで毎日クタクタになるほどなのですが、そのハードワークに付き合えるからこそ早く昇進させてくれるのです。体力がない人に重要にポストは任せられません。ハードワークを経験させることは、将来の役員としての資質なども試されているのです。

こうして同期トップで昇進させた人に対する会社の期待は大きなものになります。直属の部長クラスの人が役員専用食堂などに連れて行き、社長などのトップに引き合わせることもあるようです。

会社のトップともなれば、それなりに威厳もあります。自分もいつかはこの地位につけるだろうかと期待しつつ緊張の面持ちで、ちょっとだけお話をすることになります。相手の社長もこの時点で「期待のホープ」の値踏みをすることになりますが、人事部お勧めのホープなのですから、問題が出ることはないでしょう。

部下管理の難しさ

とはいえ、部下管理というものは難しいものです。管理職になる直前は、自分が昇進することを予感していますから、自分の上司がどのようなふるまいをしているかを注意して観察することになります。

部下に対する対応のノウハウは、巷のノウハウ本だけを読んで理解できるものではなく、自分が実際にやってみないとわからないものがあります。おぼろげながらも、管理者としてなすべきことがわかってくるようになってきます。

しかし、実際に部下管理をするようになると、自分より年上の部下がいたりしてやりにくい部分があります。自分が入社した時の先輩がいたりすると尚更です。しかし、そこは「割り切り」が必要です。

昇進していく人が最初にぶつかる壁は、このような部下管理の難しさです。年下の部下ばかりではなく、年上の部下に対していかに顰蹙を浴びないように指示を出し、そして結果を出していくかは「同期トップ」の腕の見せ所です。

多くなる飲み会

管理職になると飲み会が増えます。お付き合いが増えることは、自分の昇進にとって大きなチャンスになるのです。社内で昇進スピードが速い人は、人的ネットワークの多い人です。コネができるというだけではなく、実際に社内の調整がうまくできるようになり、仕事もスムーズに進みますし、チャンスが転がり込むことも多いのです。

そして、新しくできた部下の中には自分同様に「同期トップ」の可能性がある人もいるかもしれません。出来がいい後輩はぜひ自分が取り上げて、同期トップに仕立ててあげたいものです。

このようにして、自分の部下との飲み会、上司との飲み会と飲み会が増えます。部署や上層部によってはゴルフなどの付き合いがあるケースもあります。ゴルフはただ単にコースを回るだけではなく、長時間一緒にいることで単なる飲み会に留まらないコミュニケーションのチャンスになっていくのです。

カードローン申込

早い段階で昇進すると、結構お金のやりくりが大変です。たいていの人はこの時点で結婚していることが多く、子供がいることも少なくありません。上層部が期待をして役員などの娘さんを紹介してくれることもあります。

結婚して子供ができると案外お金がかかるものです。そして、昇進するとともに給料も増加し、将来の見通しも明るいことから子供に教育を付けようと考えることも少なくありません。子供が一人であればともかく、二人三人となれば負担はかなり大きくなります。

給料の中からお小遣いをもらって「交際費」とする人が多いようですが、十分な金額をお小遣いとしてもらえるわけではありません。しかし、付き合いを縮小すると自分の将来に悪影響をもたらします。

こうして、お金が足らなくなるとカードローンで一時的にしのごうと考える人が増加します。銀行や消費者金融(例:アコム)は、信用力がある相手に対してはかなり優遇したサービスをしてくれます。一般的なカードローンより利率が低く、融資限度額が大きなローンを提供しているのです。

すんなり通る1軒目

銀行でも消費者金融でも1軒目はすんなりと審査が通るものです。信用情報機関のデータを見ても返済遅延もなく、収入も多いので審査上問題になることは何もありません。最優遇のカードローンを申し込んでも余裕で審査は通ります。

大企業の正社員がカードローンを始めて申し込んでびっくりするのが限度額です。年収300万円程度なのに銀行系であれば100万を超える限度額を設定してくれることがあるのです。派遣の方が申し込んでも門前払いにあうことがあるのに比べると雲泥の差です。

大企業の管理職になりたての人は、年収が500万を超えることも少なくありません。銀行系カードローンを申し込めば、給与振込をしている人なら200万円程度の融資限度額になることもあるでしょう。しかし、それは年収が200万円上乗せになったわけではないのです。

この高額な融資限度額は、信用の表れです。大きな限度額を見て「怖い」と思うか、「やったぁ」と喜ぶかでその後の人生が変わります。喜んで使ってしまう人は、自己破産予備軍になります。「怖い」と感じて警戒しつつ使い続ける人が賢い使い方ができる人なのです。

突発事項で利用額は増える

会社の付き合いが多くなるとはいえ、他の参加者も家庭がある身ですから、無茶をすることはありません。ゴルフの付き合いも、最近は安いところが増えたので昔のように1回行くと3万から5万ということはありません。役員が同行するコンペなら別ですが、同レベルの管理職同士のコンペなら1万から2万程度で済むでしょう。

しかし、誰しも突発事項はあります。本社勤務をしていた人が修行のために地方支店に単身赴任させられることもあります。この場合、給料水準が下がることもあります。地域によって給料水準が違うこともあるのです。しかも単身赴任の場合二重生活なので家計費が増大するのです。

こんな時に限って車の修理や買い替え、更には自分の親の調子が悪くなり、ある程度の援助をせざるを得なくなるのです。この手の突発事項は起きてしまうと始末が悪く、事情によっては会社に対して配慮をお願いする必要が出ることもあります。しかし、昇進がかかっている人にとっては、その決断をすることが何を意味するかを知っています。そのため、我慢するしかないのです。

家庭の事情は待ってくれない

突発事項がなく、平穏無事に毎日が過ぎたとしても家庭の事情は待ってくれません。子供が進学すればそれに従ってお金が必要になります。私立の小学校などに通わせることになれば、ちょっとした金額の授業料が必要です。

住宅ローンを借りてマイホームを買う人も少なくありません。マイホームを買うことで自分の人生が充実するという人も少なくありません。しかし、住宅ローンの返済額は多かれ少なかれ家計を圧迫します。

マイホームを買う層の年齢は30代から40代の方が多いです。会社の付き合いも多くなり、公私ともにお金が必要なシーンが増加します。しかし、年収がある程度あることで「何とかなる」と錯覚してしまうことも少なくありません。

年収1千万でも家計が破たんしているケースは少なくありません。家計支出があまりに肥大化しているためです。年収500万程度で満足のいく生活をしている人が多いのに、この差が出てくることは不思議なのですが、子供を私立の学校に進学させるとこのようなことになってしまうことが多いようです。

非情な人事

お金の面では苦労しても、ほとんどの人はなんとか乗り切るものです。しかし、不幸にも支出が過大になりカードローンの限度額も上限に達すると、それ以上貸してくれる消費者金融はありません。

最初に銀行系カードローンを目いっぱい借りてしまうと、貸金業法の総量規制を超える限度額になっているため、消費者金融では貸すことができないのです。往々にして、このような家庭は奥さんや子供も高価な買い物をする傾向にあるため、お金が足りなくなるのです。

結果として、支払ができなくなり会社に内緒で債務整理をすることになります。子供は私立の学校から公立の学校に転校になりますから負担が大きいです。新しい学校でいじめられたりすることも少なくありません。

債務整理はなぜバレる?

債務整理にはいろいろな種類があります。申請時の元本相当額を何年かかけて返済する任意整理の方法もあれば、元本そのものをカットする法的整理の方法もあります。マイホームを持っている人は自己破産をすると路頭に迷うため、個人再生の方法を使うことが多いでしょう。

任意整理の方法であれば、会社どころか家族に内緒でも手続をすることができます。しかし、法的整理の方法は官報に名前が出るので隠し切れないことがあります。会社によっては人事部が社員の身元調査をしていることがよくあります。債務整理をしている社員は問題を起こす可能性が高いので、会社側も注意していることが多いようです。

このようなことは管理職の方であれば当然承知しています。しかし、背に腹は代えられず債務整理をすることになります。会社に黙って債務整理をしてバレてしまうと、会社によっては「告知違反」として社内の制裁処分を受けることがあります。とか言って正直に言っても降格処分を受けることは間違いありません。

個人再生でマイホームはキープ

このようなパターンの家庭の場合、任意整理では対処できないことが多いです。住宅ローンが足枷になり、将来の利息を免除しても返済が続行できないためです。元本カットに踏み切らないと返済ができないわけです。

最近は住宅ローンだけを残して、他の借金の元本をカットする個人再生の方法があります。この方法を選択することでマイホームを維持したまま債務整理をすることができます。最悪の結果は回避しつつ、カットされた残額を3年間かけて返済し続けることになります。

とはいえ、家庭内の生活は一変します。会社に対して正直に言うかどうかの違いはありますが、降格処分は避けられないでしょうし、今までのような付き合いを続けることはできません。昇進の夢は断たれたと言っていいでしょう。

こうなった人の中には自暴自棄になってしまい家庭崩壊に至ることもあります。しかし、今までの自分たちのふるまいを反省して、新しい生活に頭を切り替える人たちも少なくありません。ちょっと高い授業料だったかもしれませんが、誰しも身の丈以上の生活はできないのです。

昇進ばかりが能ではない

このような事態になると夢も希望もなくなります。人によってはノイローゼになる人もいます。自暴自棄で体調を崩す人もいます。しかし、ある程度落ち着いて自分の立ち位置が見えてくると悟りが開けるものです。

個人再生をすることで今後はまともにクレジットカードの申し込みなどはできません。最低でも5年間は信販会社も消費者金融も相手にしてくれないでしょう。しかし、それだけではなく5年経過後も信用情報が「きれいすぎる」ことを理由にしてクレジットカードを発行してくれないこともあるのです。

クレジットカードが使えなくなると、生活がかなり不便になります。今までいかに便利な生活を送っていたかがよくわかります。コンビニでもいちいち小銭を出して物を買うようになりますし、そもそも小遣いが激減するためコンビニで買い物をする回数自体激減するでしょう。

このような生活が続くと、昇進ばかりが能ではないことに気が付きます。今まで社内で出世競争に遅れた同期を心の中で笑っていた自分が恥ずかしくなります。人生もっと大切なものがあると気が付くのです。